借金問題を解決するための法的手続きである自己破産。経済的に追い詰められている方にとって、手続きにかかる費用が気になるところです。ここでは、自己破産の費用相場や支払いが困難な場合の対処法、さらに弁護士に依頼するメリットについて詳しく解説します。

自己破産にかかる費用

自己破産は、借金を整理し解放されるための法的手続きですが、この手続きには一定の費用が必要です。自己破産にかかる費用は主に「裁判所に支払う費用」と「弁護士事務所に支払う費用」の二つに分けられます。裁判所への支払いには、申請に必要な印紙代や予納金が含まれ、弁護士に依頼する際は着手金や報酬金も考慮に入れる必要があります。

◆裁判所への支払い
・申立時の印紙代
・予納金(破産手続きの実費)

◆弁護士への支払い
・着手金
・報酬金
・相談料

一般的な相場として、自己破産の総費用は約50万円から100万円程度となります。ただし、この金額は債務の状況や選択する破産方式によって大きく変動する可能性があります。
以下では、これらの費用について詳しく解説していきます。費用の内訳を理解することで、自己破産を検討される方の参考になれば幸いです。

3つの自己破産とそれぞれの費用

自己破産の申立てには、裁判所指定の「予納金」の納付が必要となります。 申立方法は、債務者の状況や保有資産によって、主に3つのパターンに分類されます。 その3パターン(同時廃止型・少額管財型・通常管財型)によって、必要な予納金の金額も変動します。

同時廃止

「同時廃止」とは、最もシンプルな破産手続の一つです。
同時廃止は、破産手続きの開始決定と同時に手続きを終了させ、免責手続きのみを行うシンプルな手法です。主に、顕著な財産や浪費がなく、免責許可決定が出ても特に問題がない方が対象となります。

◆手続の特徴
・破産開始と同時に手続が完了
・免責手続のみを実施
・財産がほとんどない方向け
・浪費などの問題行為がない方が対象

◆申立人の条件
・目立った資産を持たない
・生活態度に問題がない
・免責を認めても支障がない

同時廃止において裁判所に支払う費用は次の通りです。

【同時廃止の裁判所費用】
・収入印紙代:1,500円
・郵便切手代:数千円
・官報公告費用:10,000円前後
・合計:10,000円~30,000円程度

少額管財

「少額管財」は、以下のような特徴を持つ破産手続です。
少額管財は、債務が一定の額を超えるが比較的少ない場合に適用される手段です。この場合、債務者は一定の資産を持っており、裁判所がその資産を管理します。少額管財では、裁判所から任命された破産管財人(通常は弁護士)が財産や免責不許可事由の有無を調査する手続きが行われます。個人の破産手続きが同時廃止とならない場合には、ほとんどのケースでこの手法が適用されます。

◆主な特徴
・中程度の債務額がある場合に適用
・一定の資産がある債務者向
・裁判所が資産管理を実施
・破産管財人による調査が必要

◆手続の流れ
・裁判所が破産管財人(弁護士)を選任
・管財人が財産状況を詳しく調査
・免責不許可事由の有無を確認

◆適用対象
・同時廃止に該当しない個人の破産案件
・最も一般的な破産手続方式

少額管財手続における裁判所への納付金額は下記の通りです。

【少額管財の裁判所費用】
・収入印紙代:1,500円
・郵便切手代:数千円
・官報公告費用:20,000円前後
・引継予納金:20万円前後
・合計:20数万円程度

通常管財

「通常管財」は、大規模な破産案件向けの手続方式です。
通常管財は、債務の額が大きく、かつ債務者に資産がある場合に適用される手続きです。この場合、裁判所はその資産を管理し、債権者への配当を行います。通常管財は、少額管財と同様に、裁判所が選任した破産管財人(通常は弁護士)が財産や免責不許可事由の有無を調査するプロセスです。ただし、債権者が非常に多いなどの複雑な事情がある案件が対象であり、個人が破産手続きを行う際に通常管財が適用されるのは稀です。

◆適用条件
・多額の債務がある
・相当額の資産を保有
・債権者が多数存在
・複雑な債権債務関係

◆手続の特徴
・裁判所による資産管理
・債権者への配当実施
・破産管財人による詳細調査
・少額管財より綿密な手続

◆注目ポイント
・個人破産では稀なケース
・主に法人破産で採用
・複雑な事案が対象
・管理や調査に時間を要する

この手続は、一般的な個人破産では滅多に選択されない特殊なケースといえます。
通常管財手続における裁判所への納付金額は下記の通りです。

【通常管財の裁判所費用】
・収入印紙代:1,500円
・郵便切手代:数千円
・官報公告費用:20,000円前後
・引継予納金:通常は500,000円前後(負債の総額により変わります)
・合計:500,000円以上

自己破産手続き弁護士費用の相場

自己破産における弁護士費用の一般的な相場をご案内いたします。 手続の種類によって費用が異なりますので、それぞれの場合の目安額を以下に記載しています。

【破産手続の種類別 弁護士費用相場】
・同時廃止:50万円前後
・少額管財:50万~80万円前後
・通常管財:80万円~100万円前後

弁護士費用の主な内訳は相談料、着手金、報酬金、弁護士の日当、交通費、郵送代、消費税など別途費用がかかります。

相談料金

弁護士への相談時にかかる相談料の費用で、相場は30分5,000~1万円程度となります。

着手金

着手金は、弁護士に依頼する際に最初に支払う費用です。訴訟の結果に関係なく発生し、一旦支払うと基本的に返金されません。
一般的な相場は30万円からですが、法律事務所ごとに金額設定が異なります。中には、着手金を低く抑える代わりに成功報酬を高めに設定している事務所もあるため、依頼前に着手金と報酬を含めた総費用をしっかりと確認することをお勧めします。

報酬金

報酬金は、訴訟や示談などの結果に応じて決まる成功報酬型の費用です。通常20万円以上が相場となっていますが、事務所によって金額は様々です。
報酬金を抑えめに設定する代わりに、着手金を高めに設定している法律事務所も存在します。そのため、個別の費用を見るだけでなく、着手金と報酬金を合わせた総額がいくらになるのか、事前に確認することが大切です。

弁護士の日当

弁護士の日当とは、弁護士が特定の業務を行うために1日あたりに受け取る料金のことを指します。この料金は、案件の種類や内容、弁護士の経験や専門性、地域などによって異なります。日当には、法律相談、訴訟活動、交渉、書類作成、裁判出廷など、さまざまな業務が含まれる場合があります。通常、半日(午前または午後)で2〜3万円、1日で4〜5万円程度が相場となっています。依頼者は、具体的な業務内容や日当の金額を事前に確認することが重要です。

交通費

交通費とは、特定の目的地に移動するためにかかる費用のことを指します。具体的には、公共交通機関(電車、バスなど)の運賃や、自家用車を使用する際のガソリン代、高速道路の料金などが含まれます。弁護士や企業がクライアントとの打ち合わせや裁判所への出廷などで移動する場合、その交通費が実費として請求されることがあります。
依頼者は、交通費がどのように計算されるか、または費用が請求されるかについて事前に確認しておくことが重要です。必要に応じて、領収書や明細を求めることも有効です。

郵送代

郵送代とは、文書や物品を郵送する際に発生する費用のことを指します。具体的には、郵便料金、宅配便の料金、あるいは特急便や書留などの追加サービスにかかる費用が含まれます。
弁護士や法律事務所がクライアントに書類を送付する場合や、関連する書類を他の関係者に郵送する際に、郵送代が必要になることがあります。この費用は、案件に関連したものとして請求されることが一般的です。
依頼者は、郵送代がどのように計上されるのか、またはどの程度の費用がかかるのかを事前に確認しておくことが大切です。必要に応じて、支出の明細や領収書の提示を求めることも有効です。

消費税

具体的には、弁護士が請求する料金に消費税が加算されて請求されるため、依頼者が実際に支払う金額は、弁護士費用に消費税を加えた総額になります。消費税率は時期によって変わる可能性があるため、依頼者は契約時に適用される税率を確認することが重要です。
また、費用に消費税が含まれているかどうか(税抜きか税込みか)も確認することが大切です。これにより、総額を把握しやすくなります。

自己破産費用が工面できない場合

自己破産に関する費用については、裁判所への手数料と弁護士費用を含めて、一般的には50万から100万円以上がかかります。もしこれらの費用を用意できない場合、どのように対処すればよいのでしょうか?自己破産の手続き費用が捻出できない場合には、いくつかの選択肢が存在します。以下にその解決策を詳しく説明します。

分割払い対応の弁護士事務所に依頼する

法律事務所によっては、自己破産にかかる弁護士費用を分割払いできるところもあります。Webサイトでその旨を案内している事務所もあるため、調べてみるのがおすすめです。また、自己破産についての相談を無料で受け付けている法律事務所も存在しますので、まずは相談を行い、分割払いの選択肢についても確認してみると良いでしょう。

分割払い対応の司法書士事務所に依頼する

自己破産は司法書士への依頼も可能で、費用は弁護士より安価な20万円~30万円程度です。しかし、司法書士は書類作成のみを担当できる資格のため、以下のような制限があります。

【司法書士へ依頼する際の注意点】
・裁判所での審尋(面接)や債権者との交渉は、依頼者本人が対応する必要がある
・管財事件の場合、少額管財への移行には弁護士資格が必要なため、裁判所への納付金額が増える可能性がある
一見費用が抑えられるように思える司法書士への依頼ですが、実際には依頼者の負担が大きく、場合によっては裁判所費用も高額になることがあります。このため、司法書士への依頼を検討する際は、これらのデメリットを十分に理解した上で判断することをお勧めします。

自分で自己破産の手続きをおこなう

自己破産は必ずしも弁護士への依頼が必要というわけではなく、自分で手続を行うことも可能です。その場合、弁護士費用を節約できるメリットがありますが、以下のような重要な課題があります。

【個人で自己破産手続を行う際の主な問題点】
◆事務作業の負担
・雑な書類作成を全て自身で行う必要がある
・裁判所での審尋や債権者との折衝も自分で対応

◆費用面のリスク
・管財事件の場合、少額管財制度が利用できず、予想以上の費用負担の可能性

◆法的保護の制限
・債権者からの取立てを即時に止められない
・手続上のミスで免責が認められないケースも

◆時間的負担
・法律知識の習得や手続きに多大な時間が必要

このように、個人での手続は一見コスト面で有利に思えますが、実際には様々なリスクや負担が伴います。弁護士に依頼することで、少額管財制度の利用機会が得られるほか、確実な手続遂行と法的保護を受けられるため、総合的に見て弁護士への依頼をお勧めします。

家族や友人に頼る

自己破産の申立てでは、金融機関だけでなく、家族や友人からの借り入れも含めて、すべての借金を裁判所に申告しなければなりません。
もし家族や友人への借金だけを返済し、他の債務を支払わない場合、「偏頗(へんぱ)弁済」という不公平な返済として裁判所から問題視されます。その結果、自己破産手続きがスムーズに進まなくなる可能性があります。

法テラスを利用する

法テラスを活用することで、一般的な弁護士への依頼よりも費用を安く抑えられることがあります。法テラスは、経済的に余裕のない方が法的トラブルに直面した際の支援を目的として、「無料の法律相談」と「弁護士費用などの立替え」を提供しています。
法テラス(日本司法支援センター)は、全ての人が平等に法的サービスを受けられるよう支援する国の機関です。

◆主なサービス内容
・法律相談が必要な方への情報提供
・経済的に余裕のない方への無料法律相談
・弁護士・司法書士費用の立替え
・犯罪被害者への支援
・過疎地域での法律サービスの提供

◆特徴
・全国どこでも相談可能
・専門スタッフが丁寧に対応
・相談は無料
・秘密は厳守
・公正中立な立場で支援

◆利用方法
・電話での問い合わせ
・各地の事務所での直接相談
・オンラインでの情報提供

法テラスの注意点

自己破産手続きを法テラスに依頼する際には、いくつかの注意点があります。以下で詳しく解説いたします。

法テラスを利用できる条件

法テラスを利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

【法テラスが定める利用条件】
◆基本的な条件
・収入制限
・月収が定められた基準額以下
・預貯金や不動産などの資産が一定額以下
・自己破産の場合の追加条件
・免責が認められる見込みがあること
・民事法律扶助の目的に適していること

□法テラスの民事法律扶助における立替制度を利用できる主な条件は以下の通りです。

◆経済的条件
収入等に関する条件は申請者の収入や資産が一定の基準以下であること。具体的な金額は年ごとに見直される可能性があります。
・単身世帯の場合:月収が182,000円以下
・2人家族の場合:月収が251,000円以下
・3人家族の場合:月収が272,000円以下
・4人家族の場合:月収が299,000円以下

◆資産に関する条件
・預貯金等の資産が1,800,000円以下であること

◆その他の条件
・日本国内に住所を有すること
・民事法律扶助の趣旨に適すること

◆注意点
・収入・資産が基準を超えても、事案によっては対象となる場合があります
・生活保護受給者は自動的に対象となります
・立替金は原則として分割で返済する必要があります

まずは法テラスに相談して、具体的な状況に応じて利用可能かどうかを確認することをお勧めします。

弁護士を選べない

法テラスを通じて弁護士に依頼する際、通常は法テラス側が弁護士を指定します。 しかし、あらかじめ法テラスと契約関係にある弁護士を自分で見つけておけば、その弁護士に依頼することができます。その場合でも法テラスの立替制度などは利用可能です。

利用するのに審査があり時間もかかる

弁護士や司法書士にかかる費用を立て替えてもらう制度を利用するには、事前審査が必須となります。
審査完了までは最短でも14日程度必要となるため、緊急の場合には対応が難しいことがあります。また、審査中は弁護士のサポートを受けられないことがあり、その間も債権者からの取立てや支払い請求は継続される場合があります。

自己破産を弁護士に依頼する大きなメリット

借金に悩み、コストをできるだけ抑えたいという気持ちはよく理解できますが、自己破産の手続きを個人で進めることは、専門的な知識や経験が必要なため、大変困難です。
弁護士に依頼することで、債権者からの取り立てに対する不安を解消でき、申請書の作成や裁判所とのコミュニケーションを任せることができます。さらに、弁護士に依頼することには以下のような多くのメリットがあります。

予納金を抑えられる可能性が高くなる

破産手続を弁護士に依頼することで、意外にも費用を節約できる可能性があります。
個人で手続を進めると、通常管財になりやすく、その場合は裁判所への予納金が50万円以上必要となります。これに対し、弁護士に依頼すると、少額管財や同時廃止で進められる可能性が高まります。少額管財の場合は予納金が約20万円、同時廃止ではほぼ費用がかからないのです。
「弁護士費用が別途必要になるのでは?」と心配される方もいるでしょう。確かに弁護士費用は発生しますが、通常管財となった場合の高額な予納金と比較すると、トータルでの支出を抑えられることが少なくありません。
このように、弁護士への依頼は、専門的なサポートを得られるだけでなく、経済的にもメリットがある選択肢となり得るのです。

督促がなくなる

弁護士に依頼すると、まず貸金業者への受任通知が送られます。これにより、業者からの取立てや督促行為がストップします。また、毎月の返済も一時的に止まるため、その分の資金を裁判所への予納金や弁護士費用に回すことが可能になります。
つまり、新たな支出を抱えることなく、既存の返済額を破産手続の費用に充てられるわけです。実際に、多くの方がこの仕組みを活用して円滑に手続を進めています。
ただし、重要な注意点として、支払督促や民事訴訟などの裁判上の請求については、この停止の対象外となります。この点は特に押さえておく必要があります。
このように、弁護士への依頼は、経済的な負担を軽減しながら破産手続を進める有効な手段となっています。

免責が得られる可能性がより高くなる

借金の返済義務を免除されることを「免責(許可)」と呼びます。この免責が認められない場合については、法律上「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」として定義されています。裁判所が免責を認めると、貸し手側の債権者は貸したお金を取り戻せなくなります。したがって、債権者にとって極端に不利な状況では、裁判所は免責を却下します。
ただし、免責不許可事由に該当していても、裁判所の裁量で免責が認められる場合があります。これを「裁量免責(さいりょうめんせき)」と呼び、破産法第252条2項に基づいています。悪質な行為がない限り、免責不許可事由があっても裁量免責が認められることが多いです。裁量免責の可否について知りたい方は、自己破産に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
悪質なケースとは、意図的な財産隠しや、裁判所に対して虚偽の申告をした場合、または過去7年以内に免責を受けたことがある場合などです。

自己破産以外の方法についても提案を受けられる

免責が認められなかった場合、2つの選択肢があります。1つは決定に対して異議を唱える「即時抗告(そくじこうこく)」、もう1つは「個人再生」の手続きを新たに開始することです。これらの対応を検討する際は、自己破産に強い弁護士への相談が賢明です。
※即時抗告(そくじこうこく)とは、裁判所の決定に対して、通常の上訴手続きよりも迅速に異議を申し立てることができる制度のことを指します。通常、この手続きは特定の裁判所の決定や命令に対して行われ、その決定が直ちに不利益をもたらす場合などに利用されます。通常の抗告と異なり、民事訴訟では7日、決定から1週間以内という短期間で申し立てを行う必要があります。

最後に

「自己破産にかかる費用」「自己破産費用の相場」「自己破産費用が難しい場合の対策」「弁護士に依頼するメリット」につきましては、いかがでしたでしょうか。借金問題を解決するための法的手続きとしての自己破産をネガティブに捉え、一人で抱え込むのはやめて、ぜひ弁護士に相談してみてください。また、自己破産手続きに対して否定的な見方をし、簡単に任意整理を繰り返す方も少なくありません。そのような状況では、無駄に任意整理の費用を支払うことになってしまいます。自己破産を検討している方や、その詳細を知りたい方、借金返済に困っている方は、お気軽にご連絡ください。