債権回収会社から予期せぬ手紙を受け取った時、多くの方が「無視すべきか、応対すべきか」と不安を感じられると思います。
実は、この状況での対応は一概には決められません。すぐに連絡を取るべき場合もあれば、慎重に進めたほうが賢明なケースもあるのです。
このページでは、以下の4つのポイントを詳しく解説していきます。
・債権回収会社の基本的な役割と仕組み
・手紙を受け取った後の適切な対応方法
・即座の連絡を避けたほうがよい状況とその理由
・借金の消滅時効援用手続きについて
これらの情報を理解することで、あなたの状況に最適な対応方法を見つけることができます。
債権回収会社(サービサー)とは
目次
債権回収会社、またはサービサーとは、借金の返済を怠る債務者に対して、債権者の代理として債権を行使し、債権回収を専門的に行う企業です。つまり、クレジットカード会社や貸金業者のために借金の取立てを行う会社です。
「取立て専門の会社」と聞くと、さまざまなイメージを持つ方もいるかもしれません。
「違法な組織なのかな?だから無視しても大丈夫なのでは?」 「もしかしたら暴力団が絡んでいるかもしれない」
しかし、債権回収会社は違法行為を行っているわけではなく、信頼性のある存在です。以下で、その詳細について説明していきます。
債権回収業者は法律に基づいて認可された業者です
債権回収会社は、債権管理回収業に関する特別措置法(通称:サービサー法)によって、債権回収の業務を特に認可された企業です。これらの会社は、以下の条件を満たさなければなりません。
■認可には以下の厳しい基準があります
・資本金が5億円以上であること
・常務に従事する取締役の中に弁護士が1名以上いること
・暴力団との関係がないこと
・法務大臣からの許可を得ていること
このように、サービサー事業には高い参入障壁と厳格な法的規制が設けられています。これは、債権回収業務の適正化と債務者保護の両立を目指すものです。
つまり、債権回収会社は、違法行為や不適切な取り立てを行う悪質業者とは一線を画した、信頼できる正規の金融機関として機能しています。
主要な債権回収業者20社
法務省の発表によると、2024年3月1日時点で全72社の債権回収会社(サービサー)が法務大臣の許可を得て営業しています。
【債権回収会社の現状と主要企業一覧】
■主要債権回収会社20社(五十音順)
・アイ・アール債権回収(株)
・アウロラ債権回収(株)
・あおぞら債権回収(株)
・アビリオ債権回収(株)
・アルファ債権回収(株)
・SMBCグループ債権回収(株)
・エム・ユー・フロンティア債権回収(株)
・(株)エムアールアイ債権回収
・オリックス債権回収(株)
・オリンポス債権回収(株)
・九州債権回収(株)
・セゾン債権回収(株)
・中央債権回収(株)
・ニッテレ債権回収(株)
・日本債権回収(株)
・パルティール債権回収(株)
・(株)住宅債権管理回収機構
・ジャックス債権回収サービス(株)
・ジャパントラスト債権回収(株)
・三菱HCキャピタル債権回収(株)
※全許可会社の詳細は、法務省公式サイト「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」でご確認いただけます。
URL:https://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html
金融機関における債権回収会社の役割とは
債権回収会社の主な収益源は、金融機関からの回収業務手数料と、割安で購入した債権の回収による利益です。
金融機関は通常、貸付債権の回収を独自に行いますが、長期滞納など回収が困難なケースでは、自社での回収を断念することがあります。その際、債権回収会社への業務委託や債権譲渡という選択肢を取ります。
このように、金融機関にとって債権回収会社は、不良債権を切り離し、専門家に回収を任せられる重要なパートナーです。そのため、多くの債権回収会社は大手金融機関のグループ企業として設立・運営されています。
債権回収会社が扱う債権の種類は多岐にわたる
サービサー法において、債権回収会社は「特定金銭債権」のみを引き受けることが認められています。
特定金銭債権とは、金融機関による貸付金や、クレジットカードを使った分割払いの購入代金などを指します。
これに加えて、破産手続き中の債務者が持つ債権や、保証会社との契約に基づく債権も特定金銭債権として扱われます。
一方で、特定金銭債権には含まれないものの、携帯電話料金や水道光熱費については、債権回収会社が集金代行の形で請求を行うこともあります。
信用情報機関(ブラックリスト)への登録は、債権回収会社からの接触で確定的です
債権回収会社からの連絡があったということは、既に何度も支払いを滞らせており、長期的な滞納が原因で信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)として登録されている可能性が高いです。
このような状況では、新規のローン契約やクレジットカードの発行が制限されることが一般的です。
信用情報機関への登録を避けたいがために債務整理を躊躇することは、現状ではあまり意味のある選択とは言えないかもしれません。
早めに弁護士や認定司法書士に相談し、アドバイスを受けたり、債務整理を依頼したりすることで、給与の差押えなどの将来的なリスクを回避するために効果的だと言えるでしょう。
債権回収会社からの連絡時の手順と対応方法
債権回収会社からの連絡が来る際の一般的な流れは、次の通りです。
・金融機関からの借入やクレジットカード支払いの遅延
・金融機関やクレジットカード会社からの督促に反応しない
・返済が長期間にわたって行われない
・債権が譲渡され、回収が委託される
・債権回収業者から連絡が届く
続いて、債権回収会社がどのような手順で債権を回収するのかについて具体的に説明します。
債権譲渡または債権回収の委託に関する通知が届く
金融機関があなたの債権を債権回収会社へ移管したことを知らせる通知が届くことがあります。
この場合、通知書と共に支払いの督促連絡が同時に来るのが一般的です。
債権回収業者からの催促が届く
債権回収会社からは、未払い金の一括払いを求める督促を受けることになります。
請求される金額には、元金だけでなく利息や遅延損害金も含まれるのが一般的です。特に長期の滞納案件では、元金の2倍を超える額を要求されるケースも少なくありません。
最初は文書による通知から始まりますが、応答がない場合、債権回収会社は電話による督促や訪問回収など、より積極的な取り立て行動に移行することがあります。
放置は禁物!督促状が届いた際の対処法
借金の督促を受け取った際は、必ず対応することが重要です。 無視を続けることで、法的措置を取られる可能性があり、最悪の場合、収入の差し押さえなどの深刻な事態に発展することがあります。 このような事態を避けるため、次以下のように、速やかに適切な対応を取ることをお勧めします。
督促状の内容と要件を確認する
第一に、受け取った督促状が法務省認可の正規の債権回収会社からの請求書かどうかを確認することが重要です。 請求内容に覚えがある場合は、早急な対応が求められます。
しかし、送付元が法務省認可の債権回収会社でない場合や、請求内容に全く心当たりがない場合は、不正な業者による架空請求の可能性があります。 以下のような特徴がある督促状を受け取った場合は、詐欺の疑いがありますので、慌てて連絡や支払いを行わないようご注意ください。
・個人情報保護に配慮のないハガキでの通知
・振込先が個人名義の口座
・複数の電話番号が記載されている
・担当者の連絡先が携帯電話番号のみ など
心当たりがある場合
心当たりがあり、支払える金額であれば、すぐに支払いを行いましょう。督促状を確認し、記載された指定の方法で手続きを進めてください。
すぐに支払えるか検討する
心当たりはあるものの、何年も支払いを行っていなかったため、遅延損害金などのペナルティが加算されており、到底支払える金額ではありません。このような場合には、慌てて債権回収会社に連絡するのではなく、弁護士や認定司法書士が提供している無料の借金相談サービスを利用することをお勧めします。
その際に、借金の詳細を確認し、支払い方法についてのアドバイスを受けることができるでしょう。また、自分に適した債務整理の方法についても教えてもらうことが有益です。
時効援用手続きが可能か判別する
5年以上にわたり一切の支払いが行われていない場合、借金が消滅時効を迎えている可能性があります。消滅時効を主張することで、返済義務がなくなることもあり得ます。まずは、最後の取引日から5年以上が経過しているかどうかを確認しましょう。最後の取引日は、通知書に記載されている以下の項目で特定できます。
・借り入れ支払期日
・最終約定弁済期日
・最終弁済期日
・期限の利益喪失日
・最終入金日 など
重要な注意点として、債権回収会社への連絡は慎重に行うべきです。時効が成立している可能性がある場合、一般の方が債権者に直接連絡をすると、支払いの約束をしてしまったり、借金を認めてしまう危険があります。このような対応を取ってしまうと、時効が中断し借金を清算できる機会を失うことになるかもしれません。
自分で判断が難しければ専門家に連絡する
債権回収会社との直接のやり取りに不安を感じる方や、時効の判断が難しい場合、または時効援用の手続きを自分で行うことに不安がある方は、弁護士や認定司法書士に相談することをおすすめします。彼らが交渉を行うことで、より有利な条件での合意が得られる可能性があります。
さらに、ほかにも支払いの遅れがある借金があって返済が難しい場合には、債務整理の手段を提案してもらい、借金を減らす方法や返済を容易にする方法を検討することができます。
訴状送付や支払督促を通じて裁判所からの連絡が届く
督促を無視したり、今後の支払いに関して合意が得られなかったりする場合、債権回収会社は法的手続きを取ることがあります。法的手続きには、主に訴訟と支払督促の2種類があります。
訴状が届いたらするべきこと
■訴訟が起こされた際には、裁判所から訴状が送付されてきます。訴状を受け取ったら、次のステップを踏んで対応してください。
まず、訴状の重要な内容を確認しましょう。特に注意すべき点は以下の通りです。
・呼出期日の日程
・答弁書の提出期限
・借金の金額や借入れの日付
これらの情報を確認することが重要です。なぜなら、あなたの主張を答弁書に記載し提出したり、指定された日に裁判所に出廷して直接意見を述べたりする必要があるからです。
もし答弁書を提出せず、また裁判にも出頭しなかった場合、債権回収会社の要求を全て認めたと見なされてしまいます。その結果、「遅延損害金も含めて全額を一括で支払うように」という判決(欠席判決)が下されることがありますので、十分注意が必要です。
■答弁書を作成し、期限内に提出しましょう。訴状の内容をしっかり把握した上で、次のような主な項目を答弁書に記載することが重要です。
・請求内容を認めるか、否定するか
・請求内容に誤りがあるか、ないか
・請求内容の中で不明な点があるか、ないか
・あなたの主張
・希望する支払い方法や和解条件など
ただし、あなたの主張が法律的に適切でない場合、不利な証拠と見なされる可能性があります。スムーズな解決を図るためにも、弁護士や認定司法書士の専門家に依頼して対応してもらうことをお勧めします。
支払督促が届いたらするべきこと
支払督促は、訴訟よりも簡便な裁判手続きです。裁判所から書類が届いた場合は、必ず2週間以内に異議申し立てを行いましょう。
この期間内に異議を申し立てると、通常の訴訟に移行され、その際は分割払いの希望を出すなどの手続きを行うことが可能です。支払督促を無視すると、裁判に負けたのと同じ結果になり、強制的な執行(強制執行)が行われることになるので、十分な注意が必要です。
5年間返済しなければ、消滅時効によって借金がゼロになる可能性がある
5年以上支払いを行っていない場合、督促が届いても即座に連絡をしないよう注意が必要です。もし消滅時効が成立している場合、その事実を主張すること(時効の援用)によって返済義務がなくなるからです。
消滅時効とは、借り手(債務者)が貸し手(債権者)に対して請求をせずに、法定の期間が過ぎた際に債権者の法的権利が消失する制度のことです。一般的にこの時効は5年で成立し、それにより借金の返済義務が消えます。
しかし、消滅時効の期間が経過しているのに連絡を取ってしまうと、その時効がリセットされてしまう可能性があり、結果として時効の援用ができなくなるリスクが生じます。
最後に
いかがでしたでしょうか?この記事では、「債権回収会社(サービサー)とは」「信用情報機関(ブラックリスト)への登録は、債権回収会社からの接触で確定的です」「債権回収会社からの連絡時の手順と対応方法」「訴状送付や支払督促を通じて裁判所からの連絡が届く」「5年間返済しなければ、消滅時効によって借金がゼロになる可能性がある」を詳しく解説してきました。
このページをお読みいただき、内容をご理解いただけたことを願っています。ただし、借金問題は複雑な法律が絡むため、一般の方が債権回収会社と直接やり取りをすることで、不利な状況になることがあります。
例えば、時効が成立しているにもかかわらず、支払いを約束してしまうと、取り返しのつかない事態に進展する恐れがあります。したがって、慎重な行動が重要です。
当事務所では、このような事態を防ぐため、借金問題に関する無料相談を実施しています。
実際の解決に向けては費用が必要場合がありますが、分割払いなど柔軟な支払プランをご用意しております。まずはお気軽にご相談ください。